【ゲノミクス】サンゴ礁の天敵オニヒトデの防除に役立つゲノム情報
Nature
2017年4月6日
このほどオニヒトデ(Acanthaster planci)のゲノム塩基配列の解読、解析が行われた上で、オニヒトデから分泌されるタンパク質の解析が行われ、オニヒトデの個体間の情報伝達に利用される因子と考えられるものが明らかになった。今回の研究は、サンゴ礁を捕食する多産なオニヒトデの防除に役立つ新しい方法の開発に生かせる可能性があると考えられている。この研究結果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
オニヒトデは、大量発生するとサンゴの被度と生物多様性が減少するため、インド太平洋地域全体で問題となっている。今回、Bernard Degnanたちの研究チームは、グレートバリアリーフ(オーストラリア)と沖縄のオニヒトデのゲノム塩基配列を解読、解析した上で、密集していたオニヒトデから海水中に放出されたタンパク質を調べた。その結果、さまざまなシグナル伝達因子と加水分解酵素が含まれていることが明らかになったが、その中にはオニヒトデに特異なエペンジミン関連タンパク質も一定数含まれていた。このタンパク質はオニヒトデにおいて多く見られ、急速に進化しており、今後の生物的防除法の目標となる可能性がある。
こうしたゲノム情報を取り入れた方法は、海洋環境において広範に適用され、海洋有害生物の行動と発生、生理機能を標的として影響を与える因子を同定するために利用できる可能性を秘めている。また、以上のデータは、オニヒトデの大量発生の原因に関する研究に役立ち、地域スケールでのサンゴ礁の有害生物の管理に寄与すると考えられる。
doi:10.1038/nature22033
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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