【健康】骨から分泌されるホルモンがマウスの食欲に影響を与える
Nature
2017年3月9日
マウスの研究で、骨から分泌されるホルモンによって食欲が抑制されることが明らかになった。この発見により、骨から分泌されるホルモンの種類が増え、これまで分からなかった食欲調節の機構も判明した。この研究成果についての報告が、今週掲載される。
骨は、内分泌系の器官でもあることが最近になって明らかになり、少なくとも2種類のホルモン(腎機能の調節に寄与するFGF23とグルコース恒常性の調節に寄与するオステオカルシン)を分泌することが知られている。今回、Stavroula Kousteniの研究チームが、骨から分泌されるホルモンをもう1つ同定した。リポカリン2(LCN2)というタンパク質が骨芽細胞(骨形成を行う細胞)から分泌されるのだ。マウスのLCN2は、インスリン分泌を誘導し、耐糖能とインスリン感受性を改善する。また、Kousteniたちは、LCN2が血液脳関門を越えることができ、視床下部のメラノコルチン4型受容体(MC4R)と結合し、食欲抑制経路を活性化させて、食物の摂取を阻害することも明らかにした。
今回の研究の特筆すべき成果は、LCN2についてこれまで知られていなかった役割を明らかにしたことだ。LCN2は、脂肪組織から分泌されるアディポカインという小さなシグナル伝達分子の一種だと考えられていたが、LCN2の骨芽細胞での発現量は脂肪組織での発現量の10倍に達している。今のところ、骨が食物摂取を抑制する理由は分かっていないが、骨量と骨格成長を維持するために役立つ機構である可能性が考えられる。
doi:10.1038/nature21697
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