Research Press Release
ゲノミクス:現場でDNA塩基配列解読をするための携帯電話ベースのデバイス
Nature Communications
2017年1月18日
がんに関連したDNA変異を検出することを目的とした携帯電話ベースのデバイスが実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。このデバイスは、検体が採取された地点での診断を可能にして、費用と時間を節約し、がん特異的な変異など独特なDNA塩基配列も検出できる。
分子診断検査は、集中検査機関で行われることが多いため、特に患者が遠隔地やアクセスの悪い場所にいると検査結果を得るまでに長い時間がかかる。今回、Mats Nilsson、Aydogan Ozcanたちの研究チームは、出張診断を可能にする携帯電話用デバイスを3Dプリンターで作製し、このデバイスが、蛍光化合物で標識されたプローブを用いて、がん特異的なDNA塩基配列を検出できることを実証した。このプローブとの一致があれば、蛍光シグナルが発生し、携帯電話のカメラで検知できるのだ。
今回の研究で示されたデバイスは、新規の変異を検出できないが、医療資源の限られた環境や地理的に隔離された環境に適用し得る分子診断を経済的に実現するための方法といえる。この技術は、がんの診断以外にも例えば病原体の検出への応用も期待されている。携帯電話ベースの診断デバイスは、これまでより短い時間と少ない費用で、現場の研究者に詳細な分子情報をもたらすことができる。
doi:10.1038/ncomms13913
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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