過去の購入経験が別ブランド商品の探索を阻む
Nature Human Behaviour
2017年1月10日
消費者は、まず商品を選び、その後に自分の好みを固めていくことが、今週掲載される論文で報告されている。今回、世界最大級の小売チェーンの1つで得られた個人購買データが解析され、商品購入者は買い物時に新商品を系統的に探索するものの、ある1つのブランドに執着する期間が長いほど、他のブランドを探索する頻度や、新商品の探索を促す目的のクーポンの使用頻度が低くなることが明らかとなった。
人間は日常的に、過去の選択を利用するか、それとも新たな選択肢を探索するかという決断に迫られている。これまでの研究からは、時間が経過するにつれて過去に行った選択の価値の確実性が低くなっていくに伴い、探索を行う確率は高まるだろうと考えられていた。
今回Peter Rieferたちの研究チームは、この仮説が現実の世界では常に当てはまるわけではないことを明らかにしている。6つの商品カテゴリーを対象に、数年間にわたって、スーパーマーケットで買い物をした28万人以上の匿名顧客による購入行動を解析したところ、人々は新たなブランドの探索に40%の時間をかけていることが分かった。一方で、新商品の探索は、購入の期間が長くなるほどなされることは少なくなり、またクーポンは購入行動を強めるものの、消費者による新たな選択肢の探索を促すことはなかった。著者たちは、消費者は自分では自身の好むものを購入していると考えているかもしれないが、実際はそうではなく、むしろ自分の好きな物とこれから買おうとしている物の調整を行っているのではないかと示唆している。買い物客の行動は広く研究されており、また今回の研究で使われたような個人レベルのビッグデータの利用は、さまざまな状況における人間の意志決定に関する知見をさらに得るための新たな機会を提供する。
今回の研究は、過去の購入が将来における好みの強い決定因子であることを示しているが、消費者はある程度の予測可能性をもって探索を行っている。そして探索の期間は、過去とは異なる、そしておそらくはより健全な選択を促す機会となる。
doi:10.1038/s41562-016-0017
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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