トランジスター様のナノプローブがマウスのがんの画像誘導手術を支援する
Nature Biomedical Engineering
2016年12月20日
腫瘍に取り込まれて蛍光を発し、がん手術で汎用的な造影剤として用いることができるナノプローブをマウスで実際に使用したという論文が、今週のオンライン版に掲載される。
がんの多くでは、手術が治療の第一選択である。腫瘍を切除する執刀医は、特に腫瘍の辺縁部付近について、がん細胞が決して残留しないように徹底しなければならない。画像誘導手術は、あらゆる残存腫瘍組織の検出、および小さすぎて視認または触知することができないいかなる腫瘍小結節の発見をも支援することができる。しかし、現在のがん手術用イメージング技術は感度および特異性が不十分であるため、非がん組織(例えば、代謝活性が高まっている褐色脂肪のような組織)を浮かび上がらせる場合がある。
Baran Sumer、Jinming Gaoたちは、臨床使用が承認されている蛍光色素を含むナノ粒子プローブを合成した。これは、手術室で使用することができる標準的なカメラに対応している。静脈に注射するそのナノプローブは、腫瘍に取り込まれた場合に限って大幅に増幅された強度の蛍光を発するように最適化された。電圧がある閾値を超えたときにスイッチが入るトランジスターのように、そのナノプローブは、ほぼ全ての充実性腫瘍に共通の特徴である酸性pHでのみ「点灯」した。マウスの頭頸部腫瘍を切除する画像誘導手術で使用した場合、そのナノプローブは前例のない特異性および感度を示し、直径1 mmに満たない腫瘍小結節を光らせながら偽陽性を生じないことが明らかにされた。
doi:10.1038/s41551-016-0006
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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