Research Press Release
【感染症】新しく見つかった化合物が、齧歯類をマラリアから救う
Nature
2016年9月8日
齧歯類のマラリアを、1回の低用量投与で治癒させる一連の化合物を発見したとの報告が寄せられている。この知見は、ヒトのマラリアを治し、伝播を防ぐ抗マラリア薬の開発を大きく進展させるきっかけになる可能性がある。
マラリアは死者数の最も多い感染症の1つで多くの治療薬があるが、その多くは、原因となるマラリア原虫Plasmodiumの複雑な生活環の1段階だけを標的としており、その上、特定の原虫系統に薬剤耐性が出現するため、有効性が限られてしまう。
Stuart Schreiberたちは、標準治療薬の限界を克服できる新しい抗マラリア薬を探すために、100,000種類もの多様な化合物のスクリーニングを行い、低用量を単回投与するだけで、マウスを30日間、原虫のいない状態にできる一連の化合物を見つけ出した。医療資源の不足した地域で、服薬率を高め、コストの問題を克服するには、単回投与で済むことが重要だと、著者たちは指摘している。またこれらの化合物は、原虫が生活環のどの段階にあっても効果があり、薬剤耐性を誘発する可能性が低いことも分かった。
今回見つかった化合物群(Malaria Therapeutics Response Portalで入手できるようにする予定)の研究を進めれば、有望な新しいマラリア治療の開発につながるだろうと、著者たちは期待している。
doi:10.1038/nature19804
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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