【神経科学】脳が相互に関連し合った対象を意識的に結びつける機構
Nature Communications
2016年11月16日
2つの対象物や2人のヒトの長期関連性が、ヒトの脳内のニューロンの個別的な発火パターンによって予測できることを明らかにした研究論文が、今週掲載される。この新知見は、長期的に記憶された関連性がヒトの脳に保持される機構に関する手掛かりとなっている。
インターネットで「ヒラリー・クリントン」を検索すると、検索結果の中に「ビル・クリントン」にも言及したものがどれだけ含まれるだろうか。こうした同時ヒットを計測することは、この2人の関連性の強さを解析する方法の1つであり、今回、Rodrigo Quian Quirogaの研究グループは、1対の画像に対するヒトの神経活動を測定することで、この関連性の程度を予測できることを発見した。Quirogaたちは、(てんかんの治療のために)電極を埋め込まれた49人の被験者のニューロンの発火パターンを測定する実験を行った。この実験では、被験者に一定数の画像を見せたが、Quirogaたちは、個々のニューロンの発火パターンから2つの画像の関連性を予測できることを発見した。これは、ヒラリー・クリントンの画像を見た時のニューロンの発火パターンがビル・クリントンの画像を見た時の発火パターンと非常に似ているが、スティービー・ワンダーの画像を見た時の発火パターンには似ていないことを意味している。
今回の研究では、脳の内側側頭葉のニューロンの観察が行われた。このニューロンは、ヒト、場所、モノを関連づける学習において一定の役割を担っていることが長い間知られていた。しかし、内側側頭葉は、学習の過程で関連性を符号化するという一時的な役割を果たすだけで、関連性の固定は別の脳領域で行われるのか、初期学習の後もこの関連性の符号化が保持されるのかは明らかになっていなかった。今回の研究でもたらされた新知見は、内側側頭葉で関連性の長期符号化が行われ、これがヒトの記憶において重要な役割を果たすことを明らかにしている。
doi:10.1038/ncomms13408
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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