【進化】細菌に感染するウイルスがクロゴケグモと同じDNAを持っていた
Nature Communications
2016年10月12日
細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)の一種が、クロゴケグモなどの動物と同じDNA塩基配列を持つことが明らかになった。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
細菌に感染するウイルスは、真核生物(つまり、動物、植物、真菌と原生生物)には感染しない。このウイルスは、宿主である細菌と遺伝物質を交換することが多いが、宿主と生物分類上のドメインが異なる生物の遺伝子を取り入れたという研究報告はない。
今回、Sarah BordensteinとSeth Bordensteinは、ファージWO(ボルバキア菌に感染するウイルス)のゲノム配列を解読し、そのゲノムの一部を構成する遺伝子が真核生物の遺伝子に類似していることを発見した。これらの遺伝子は、昆虫やクモの毒素をコードする遺伝子に近縁な遺伝子で、宿主と微生物の相互作用、宿主におけるアポトーシス(プログラムされた細胞死)や細胞膜を介した輸送に関与している。ボルバキア菌自体は、昆虫やクモの細胞に感染することから、これらの遺伝子の役割はファージWOが動物の細胞に侵入してボルバキア菌に到達することを助けることだ、とBordensteinたちは考えている。
これらの遺伝子は、真核生物に類似した性質とさまざまな動物での分布をもとに、ファージWOに取り込まれる前は、もともと動物の遺伝子であった可能性が非常に高いと考えられている。ただし、動物とウイルスの間でのDNAの伝播の方向と経路は、いまだに解明されていない。
doi:10.1038/ncomms13155
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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