【微生物学】フケ症の重症度に対する細菌の影響
Scientific Reports
2016年5月12日
頭皮上のさまざまな細菌種のバランスがフケ症の重症度に影響を及ぼしている可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。
フケ症は、よく見られる頭皮の疾患で、世界の総人口のほぼ50%が罹患し、頭皮上の微生物(特に菌類)がフケ症発生の主たる原因だと考えられている。
今回、Menghui Zhangたちは、59人の中国人参加者(18~60歳)から採取した174点のサンプルを用いて、複数の生理的条件(年齢、皮脂濃度、頭皮上の微生物の構成)とフケ症の重症度の相互関係を調べた。参加者には分析の48時間前に洗髪させ、頭皮上の8つの部分からフケのサンプルが収集された。
その結果分かったのは、頭皮上の菌類よりも細菌種の方がフケ症の重症度との関連が深いことだった。頭皮上の細菌種の中で最も多かったのはプロピオン酸菌とブドウ球菌で、両者はお互いを阻害する関係にあり、フケ症の重症度に影響を与えていた。フケ症が発生している場合には、正常な頭皮と比べて、頭皮上のプロピオン酸菌の数が少なく、ブドウ球菌の数が多くなっていた。Zhangたちは、頭皮の皮脂がプロピオン酸菌の栄養源になっている可能性があり、頭皮の水分が多いことがプロピオン酸菌の増殖に適した環境だと考えている。
また、Zhangたちは、頭皮上の細菌のバランスを調整すること、とりわけプロピオン酸菌を増やし、ブドウ球菌を抑制することがフケ症の重症度を緩和する解決法となる可能性があると主張している。
doi:10.1038/srep24877
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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