フンコロガシをだまして種子を散布させる植物
Nature Plants
2015年10月6日
アンテロープの糞に似た外見と臭いでフンコロガシを誘引する種子をもち、虫に種子を散布させて地中に埋めさせる植物についての報告が、今週のオンライン版に掲載される。その種子は硬く、フンコロガシには何ら報酬をもたらさないことから、これが植物の種子散布における「だまし」の希少な例であることが示唆される。
花、特にランには、他の植物や昆虫に姿を似せて授粉動物を誘引する例が多いが、種子の散布を目的とした擬態の存在については議論があった。
Jeremy Midgleyたちは、デフープ自然保護区(南アフリカ・ケープ地方南部)のCeratocaryum argenteumの堅果 ― 近縁種のものよりも大きくてアンテロープの糞に似た強烈な臭いを放つ ― が散布の補助用に偽装の機能を発揮しているのかについて調べた。
堅果の大きさと質感からは、小型哺乳類によって収集・貯蔵されるのではないかとも考えられるが、この地方では「分散貯蔵」行動を示す小型哺乳類は知られておらず、研究チームが設置したカメラトラップは現地の齧歯類が堅果に見向きもしないことを明らかにした。その代わりに研究チームが見たのは、堅果を遠くまで転がして埋めるフンコロガシ(Epirinus flagellatus)であった。
種子が放つ揮発性化合物を研究チームが分析した結果、その濃度と組成はエランドやボンテボックの糞が放出するものに類似していることが分かった。しかし、堅果は硬すぎるため、フンコロガシが食べたり産卵したりすることはできない。アンテロープの糞に擬態することにより、C. argenteumはフンコロガシをだまして報酬なしで播種させていると考えられる。
doi:10.1038/nplants.2015.141
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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