【地球科学】大量絶滅の前触れ
Nature Communications
2015年8月26日
奇形のあるプランクトンが大量絶滅の新たな要因を示唆している可能性を裏付ける証拠を示した論文が、今週掲載される。最古のいくつかの大規模な大量絶滅は氷河作用と関連していることがすでに明らかになっているが、この論文によれば、海洋の酸素欠乏の拡大と有害な金属が大量絶滅の原因である可能性の方が高いとされる。
今から4億2000万年以上前のオルドビス紀-シルル紀の大量絶滅事象は間欠的に起こり、当時は、大部分の生物が海の中で繁殖し、陸上で生き延びた生物はわずかだった。これまでの研究で示されたモデルでは、この大量絶滅事象の原因が気候の寒冷化と生息地の減少であることが示唆されていたが、こうしたモデルは、古生物学的観察結果と地球化学的観測結果を説明できない。
今回、Thijs Vandenbrouckeたちは、シルル紀後期の絶滅事象の開始時に起こったプランクトンの奇形の発生過程が、高濃度の金属毒素に対する現代の生物の応答に非常によく似ていることを明らかにした。Vandenbrouckeたちは、奇形のあるプランクトンの発生とその化石が保存された岩石の金属含有量の急増が同時に起こっていたことから、金属中毒も古代のプランクトンの奇形の原因だった可能性があると考えている。金属含有量が高いということは、海洋の化学組成が変化し、酸素欠乏の拡大が生物の死滅をもたらすメカニズムとなって、この初期絶滅事象に寄与したことを示唆している。
海洋の酸素欠乏が大量絶滅の背後にある駆動力だとする研究報告が最近になって発表されており、そのことは今回の研究によっても裏付けられている。また、奇形のある化石プランクトンが酸素欠乏期の開始時を明らかにするための新たな法医学ツールとなる可能性も示唆されている。
doi:10.1038/ncomms8966
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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