中央アジアの減少する氷河
Nature Geoscience
2015年8月18日
中央アジア中心部をまたいで2,500kmにおよぶ天山山脈の氷河から、過去50年間にその全体質量の25%以上が失われたという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この氷河からの損失質量は、この期間における全球平均のおよそ4倍以上大きい。
天山山脈の雪と氷河の融解は、カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンおよび中国の新疆ウイグル自治区の住民に水を供給している。しかしながら、このような水の供給の減少とそれに依存する人口の増加が暗示することの意味にも関わらず、天山山脈の個別の氷河の状況に関する情報は少なく、この地域全体の氷河変動の見積もりは、過去10年間のものに限られている。
Daniel Farinottiたちは人工衛星データ、現地観測および氷河学的モデルを組み合わせて、1961年~2012年における天山地域全体の個別の氷河質量変動を再現した。質量変動は個別の氷河だけでなく年毎に変化しているが、Farinottiたちは地域全体で過去50年間にその氷河全体質量の25%以上が失われたことを見つけた。Farinottiたちは、この減少を夏季の融解が増加したことと関連付けている。
気候モデルは、今後10年間に夏季の温度が継続して上昇すると予測しており、天山山脈の氷河がますます壊れやすくなることが示唆される。より詳細な予測が必要ではあるが、Farinottiたちは天山山脈に残っている氷河の体積は2050年までに50%減少すると見積もっている。
doi:10.1038/ngeo2513
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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