【医学研究】もう1つの減量手術
Nature Communications
2015年7月22日
胆汁の流路を変えて、胆汁が小腸の末端に流れ出るようにする外科手術に、胃バイパス手術と同程度の抗肥満効果のあることがマウスの研究によって明らかになった。この研究結果についての報告が、今週掲載される。
ルーワイ胃バイパス術(RYGB)、垂直スリーブ状胃切除術(VSG)などの減量手術は、胃を一部切除し、あるいは小さな胃の袋(胃嚢)を小腸と直接つなぎ合わせる手術だ。これらの外科的処置は、ヒトにおいて減量効果が長期間持続し、糖尿病の症状を改善させる最も有効な治療介入となっている。これまでの研究では、胃バイパス手術の有益な代謝効果の一部が胆汁酸によって調節されていることが明らかになっていた。
今回、Naji Abumradたちは、肥満マウスの胆嚢を小腸のさまざまな部分と縫い合わせる手術を行って、代謝に対するプラスの影響を最大8週間にわたってRYGBと直接比較した。その結果、胆汁酸の流路を変えて、小腸の末端(回腸)に流れ込むようにすれば、もっと複雑な従来の外科手術と同程度の抗肥満効果が十分に得られることが分かった。Abumradたちは、小腸での脂肪吸収量が減り、腸内微生物叢が変化したことが抗肥満効果の一因だと考えている。
胆汁の流路を変える外科処置は、RYGBより侵襲性が低く、技術的要求度も低いが、Abumradたちは、この処置の長期的安全性と有効性が判明していない点に注意する必要があるとしている。また、この処置は、胆石のために胆嚢の切除手術を受けた糖尿病患者と肥満者には効果がない可能性があり、この処置を行った後で元の状態に戻せるかどうかも今のところはっきりしていない。
doi:10.1038/ncomms8715
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