Research Highlights

神経芽細胞腫の検査は不要

Nature Reviews Cancer

2002年5月1日

初期の段階で癌を検出する簡単な尿検査は、あらゆる腫瘍学者の夢だ。ところが、そ のような検査が利用できるようになっている子供の神経芽細胞腫の場合には、検査を しても命は救わない、と2つの研究グループが報告している。

のよく見られる子供の腫瘍はカテコールアミン産生を活発に行うので、その代謝産 物を尿中で測定することができる。日本では、この代謝産物を指標にした乳児の診断 的試験が行われている。ところが、検査群からデータを集める以前に対照群からのデ ータを集めていたので、この試験が生存率を改善することを最初に示した研究の妥当 性に疑いがもたれてきた。さらに、子供の神経芽細胞腫は自然に退縮することもある ので、実際にはこの腫瘍を早期に検出することは、不必要な外科手術による死亡率を 増加させているかもしれない。

回、2つの研究グループが、大規模な集団で検査群と非検査群の赤ちゃんを同時期 に比較した。William G.Woodsらは、カナダのケベック州の42万5000人以上の赤ちゃ んを誕生後3週間目と6か月目に検査し、8歳になるまで経過を追跡した。検査しなか った子供からなる4つの異なる集団と比較して、検査群での神経芽細胞腫による累積 死亡率は低くならなかった。そのうえ、その検査では、MYCN遺伝子増幅など前兆 になる指標に乏しい腫瘍のほとんどを検出できなかった。

reimut Schillingらは、ドイツの6つの州で150万人ほどの1歳児を検査し、他の10州 で同時期に生まれた赤ちゃんと後期神経芽細胞腫(第4期)の発生率と死亡率を比較 した。検査した集団のほうが多くの神経芽細胞腫が検出されたという事実にもかかわ らず、第4期の神経芽細胞腫の発生率と死亡率は、検査群と非検査群で同じだった。

の2つの研究結果から、乳幼児の神経芽細胞腫の集団検査は行う必要がないことに なる。また、経過が異なる2種類の神経芽細胞腫(非常に悪性で、尿検査ではひっか からないらしい腫瘍と、進行がゆっくりで容易に検出されるが自然に退縮することが 多い腫瘍)についての研究がもっと必要なことも明らかになった。

doi:10.1038/nrc812

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度