Research Press Release
マウスのコカイン嗜癖を治す遺伝子治療
Nature Biomedical Engineering
2018年9月18日
遺伝的に改変した皮膚幹細胞が、マウスのコカイン探索行動の発現やコカインの過剰摂取を防ぐことを示唆する論文が、今週掲載される。今回の知見が臨床応用可能かを明らかにするにはさらに研究を行う必要があるが、この手法は、薬物乱用を長期的に管理するための新たな治療法に道を開くと考えられる。
薬物、とりわけコカインの乱用は、強迫的な薬物探索を伴い、長期にわたる摂取中止を経ても再発する場合が多い。コカインの過剰摂取による救急患者を治療するための効果的な戦略が求められているが、これまでに開発された行動的・薬理学的治療戦略の奏効率は低い。コカイン分解用に最適化された酵素ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)の筋肉内注射による治療は、BChEの半減期が短いこともあり、動物モデルでの効果は限定的である。
今回Ming Xu、Xiaoyang Wuたちは、概念実証研究で、BChEを産生するよう遺伝的に改変したマウス皮膚幹細胞を元のマウスの皮下に再埋植し、埋植した細胞がBChEを血流中に放出する拠点として長期にわたって働くことを示した。この処置は、条件付け場所嗜好性試験においてコカイン探索行動を減少させ、致死量のコカインを与えられたマウスの死を防いだ。
doi:10.1038/s41551-018-0293-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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