【神経科学】乳幼児は見ている
Nature
2017年7月13日
赤ん坊が手を伸ばしたり、ハイハイしたり、歩行したりする前の段階において情報収集の手段として用いるのが社会的視覚関与という能力だが、遺伝性が高く、この能力が自閉症の子どもにおいて低下していることを示唆する研究結果について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、乳幼児が社会的行動の探究を進め、理解を深める上で社会的視覚関与が重要な一側面となっており、自閉症の子どもに限らず、より広い範囲の子どもたちにとって重要だとする学説が裏付けられている。
今回、Warren Jonesたちの研究グループは、社会的場面を見ることの個人差を評価するために一連の視標追跡実験を実施し、顔と顔に似た視覚刺激に対する注意力や個々の眼球運動のタイミング、方向性と目標設定を調べた。この実験の対象となったのは338人の乳幼児で、そのうち166人が一卵性双生児と二卵性双生児で、88人が自閉症スペクトラム障害と診断された非双生児で、84人が単生児(対照群)だった。この実験の結果、一卵性双生児が同じように応答し、91%という高い一致率を示したが、二卵性双生児は、それほど類似しておらず、一致率が35%で、この結果は、こうした行動に強い遺伝的要因のあることを示している。また、遺伝性が最も高かった評価項目(例えば、顔の眼と口の領域への選択的注目)は、自閉症の子どもにおいて特異的に評価が低かった。
今回の研究結果は、子どもとその環境との相互作用が遺伝的特徴によってどのように決まるのかという点に関する知見をもたらしている、とJonesたちは結論づけている。Jonesたちは、自閉症の子どもたちと同世代の子どもたちの発達を調べる実験で対照的な結果が得られた研究でも同じような考え方が模索されていたことを認めた上で、直接的に追跡可能な遺伝的影響について実証されたのは今回の研究が初めてだと主張している。
doi:10.1038/nature22999
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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