神経科学:大量飲酒が過食を引き起こす過程を解明する手掛かり
Nature Communications
2017年1月11日
通常は空腹感を助長する脳細胞がアルコールによっても活性化することがマウスの研究で明らかになった。この新知見は、アルコールの摂取が過食を引き起こす理由を解明するうえで役立つ可能性がある。この研究成果を報告する論文が今週掲載される。
ヒトの過食にはアルコール摂取が関係していると考えられているが、その根底にある原因は分かっていない。アルコールは高カロリーで、カロリー摂取があると通常は脳の食欲信号が抑制されるからだ。今回、Denis Burdakovたちは、マウスを用いた研究で、過食行動の根底にある神経機構を明らかにしている。この研究で、脳の摂食回路の主要な構成要素がアルコールによって活性化することが明らかになった。マウスを用いて「週末アルコール依存症」実験が行われ、3日間にわたって約18ユニット(英国での測定結果に基づいた値)に相当する用量のアルコールをマウスに与えたところ、アルコールを投与されていないマウスのグループと比べて、食物摂取量が有意に増加した。Burdakovたちは、マウスの脳の摂食回路の一部で、空腹感を助長するAgrpニューロンもアルコールによって活性化することを明らかにした。さらには、Agrpニューロンの活動が消失すると、アルコール摂取による過食がなくなった。このことは、アルコールによる過食にAgrpニューロンの活動が必須であることを明らかにしている。
以上の結果は、アルコールが基本的な食欲信号を持続させることを示しており、過食行動に関する新たな知見といえる。
doi:10.1038/ncomms14014
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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