細胞:CaMKIIは心臓でミトコンドリアストレス応答を規定する
Nature 491, 7423 doi: 10.1038/nature11444
心筋細胞の細胞死は、ミトコンドリアへのCa2+の過剰な流入によって、Ca2+過負荷、mPTP(mitochondrial permeability transition pore)の開口や、ミトコンドリア内膜電位(ΔΨm)の散逸が引き起こされると開始される。しかし、ミトコンドリア内膜Ca2+単一輸送体(MCU)を介するミトコンドリアへのCa2+流入を調節するシグナル伝達経路は知られていない。複数の機能を持つCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)は、心筋細胞死と心不全の一般的な原因である虚血再灌流、心筋梗塞、神経体液系障害で活性化されることから、CaMKIIが疾患ストレスとミトコンドリア傷害を結びつけている可能性が考えられる。今回我々は、CaMKIIがMCU電流(IMCU)の増加によって、mPTPの開口と心筋細胞死を促進することを示す。ミトコンドリアを標的とするCaMKII阻害タンパク質、および虚血再灌流傷害に対して臨床的に有効なmPTP阻害薬シクロスポリンAは、mPTP開口やΔΨm低下に対して同程度の効果を示し、虚血再灌流障害に応じて起こるミトコンドリア破壊とプログラム細胞死を軽減する。心筋およびミトコンドリアを標的としてCaMKIIを阻害したマウスでは、IMCUが減少し、虚血再還流傷害、心筋梗塞、および神経体液系傷害に抵抗性となるので、CaMKIIの病的作用のかなりの部分はIMCUの増大によってもたらされると考えられる。我々の結果は、CaMKII活性が心筋細胞死でのミトコンドリアCa2+流入の主要な機構であることを明らかにし、ミトコンドリアを標的として行うCaMKII阻害が病態生理学的ストレスの一般的な実験系に応じて起こる心筋細胞死と心不全を防止あるいは軽減する可能性を示している。

