Nature ハイライト

発生生物学:ヤツメウナギの耳の中

Nature 565, 7739

脊椎動物学の全ての教科書には、「顎口類(すなわち、ヒトを含む有顎脊椎動物)は左右それぞれの内耳に、ピッチ、ロール、ヨーといった回転運動を検知するのに最適化された、三半規管を持つ」と書かれている。一方、内耳の構造が知られている顎を持たない魚類の化石には半規管が2つしかなく、これは一般に、同じく無顎の魚類である現生のヤツメウナギにも当てはまると考えられている。しかし、同じ無顎類に属するヌタウナギは、半規管を1つしか持たない。こうした違いはこれまで、ヤツメウナギが進化的にヌタウナギよりも顎口類に近い場所に位置付けられることの根拠として用いられてきた。ところが近年、ヤツメウナギとヌタウナギは円口類という1つの自然分類群を形成し、ヌタウナギに見られる原始的と考えられてきた多くの形質は二次的に派生したものであるという見方が復活している。今回、こうしたヌタウナギとヤツメウナギの近縁性を示す新たな証拠が、倉谷滋(理化学研究所)たちによるヤツメウナギとヌタウナギの発生研究によって示された。ヤツメウナギには、半規管が2つではなく1つしかないことが明らかになったものの、膨大部稜として知られる感覚器官は2つ発生するように見受けられた。顎口類では、これら2つの膨大部稜が三半規管のうち2つの半規管の基礎となっており、ヌタウナギにおける膨大部稜の数の減少は二次的な変化と見られる。

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