The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

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暗号技術に相対論を使う

Nature 599 2021年11月4日

ゼロ知識証明とは、ある当事者が別の当事者に対して、ある特定の情報(例えば、ID)の知識を、その情報について何も明かすことなく立証するのを可能にする暗号プロトコルである。ゼロ知識証明は、秘密の情報を知ると自明になる特定の数学的問題を解くという課題に依存することが多い。計算機の進歩によって、こうした手法のセキュリティーが損なわれる可能性がある。今回P Alikhaniたちは、相対論の法則だけでセキュリティーが強化された、2組の離れた証明者/検証者が関与するゼロ知識証明を、実験的に実現したことを報告している。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-02950-4

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03998-y

2

超伝導体におけるランダウ準位

Nature 599 2021年11月4日

マヨラナフェルミオンなどのトポロジカル状態を作る有望な方法の1つは、超伝導と量子ホール効果を組み合わせることである。これまでのところ、この手法での実現は、それぞれが一方の現象を出現させる2つの異なる物質から構成されるヘテロ構造に限られていた。今回J Checkelskyたちは、超伝導物質において、量子ホール状態の出現に必要なランダウ準位の特徴を報告している。このボース粒子ランダウ準位間の遷移の観測は、50年以上前に理論的に導入された概念である運動量が有限となるクーパー対の形成に基づいている。今回の結果によって、この新しい種類の超伝導体においてボース粒子ランダウ準位やトポロジカル状態を調べる機会が開かれた。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03915-3

3

有機半導体の高効率n型ドーピング

Nature 599 2021年11月4日

半導体の技術的汎用性の多くは、正および負の電荷キャリアを化学的にドープして固有の電子特性を容易に調節できることに由来している。しかし、有機半導体の場合、電子ドーピング(すなわちn型ドーピング)は化学的に難しいことがあり、通常効率が低い。今回H Guoたちは、伝導率が非常に高い安定なn型材料を得る非常に効率の良い戦略を報告している。出発点となるのは、安定で比較的不活性な前駆体ドーパント分子を有機半導体に添加した後にin situで活性化させて電子を導入するという、「前駆体型」ドーピング戦略である。著者たちは、触媒を用いてこの活性化段階をさらに容易にする方法を提案し、実証している。この方式を用いることでさまざまな材料が探索されており、複数のデバイス環境において性能向上の可能性が示された。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03942-0

4

油田の経済的継続性と環境特性

Nature 599 2021年11月4日

油田の経済的継続性と環境特性の相互作用はよく分かっていない。今回M MasnadiとA Brandtたちは、1933か所の油田で得られたデータに基づいてさまざまな油田の経済的特性と環境特性の両方を関連付ける、世界の石油供給の技術経済的分析について報告している。その結果、需要低下の規模と世界の石油市場の構造に依存する、炭素排出量の削減と石油需要の低下の間の非線形関係が明らかになった。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03932-2

5

深層学習を用いた遺伝的バリアントの効果の予測

Nature 599 2021年11月4日

遺伝型判定や塩基配列解読の研究を解釈する際の課題は、遺伝的バリアントが遺伝子、細胞、生物の機能にどのような影響を及ぼすかについて知識が不足していることである。計算手法は、主に教師あり予測と臨床的な疾患ラベルの使用に依存しており、偽陽性率と偽陰性率が高い傾向がある。D Marksたちは今回、遺伝子の進化的保存と塩基配列の状況を学習する変分オートエンコーダーに依存して、疾患ラベルや教師を必要とせずにバリアントの効果を予測できるモデル「EVE(evolutionary model of variant effect)」を開発したことを報告している。このモデルによる予測は、実験的に精巧で比較的ロースループットな(一度に1遺伝子)、高深度の変異スキャンによる手法と少なくとも同等に優れており、これまでに得られた3000を超える遺伝子についての予測はウェブサイト(https://evemodel.org)で公開されている(予測結果は逐次追加される予定である)。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-04043-8

6

COVID-19時代のデータ駆動型入国管理手法

Nature 599 2021年11月4日

H Bastani、K Drakopoulos、V Guptaたちは今回、強化学習ベースのアルゴリズム(通称Eva)の設計とその性能について報告している。Evaは、2020年夏にギリシャの全ての国境に導入され、入国者に対して対象を絞った重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)検査を行ってきた。このようなアルゴリズムでは、それまでの検査結果に基づいて、検査が必要な入国者が決定される。これによって、はるかに効率的で応答性の高いシステムが実現し、このシステムは国レベルの疫学的指標に基づく検査戦略よりかなり優れていた。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-02556-w

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-04014-z

7

SARS-CoV-2デルタ変異株の特性解析

Nature 599 2021年11月4日

R Guptaたちは今回、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株の特性の違いについて、伝播、感染性の機構、抗体療法や現在使われているワクチンに対する潜在的な抵抗性という観点から調べている。その結果、デルタ変異株の生物学的性質や、その性質がパンデミック(世界的大流行)に対して及ぼす影響についての手掛かりが得られた。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03944-y

8

エストロゲンとエネルギー配分

Nature 599 2021年11月4日

エストロゲンは体に良い。エストロゲンが枯渇すると活動低下や不健康な脂肪の蓄積、糖尿病につながる。齧歯類では、17β-エストラジオール(エストロゲンE2)が排卵前に急増することで、一時的にエネルギー消費がエネルギー摂取量を上回るようになり、これによって身体活動の増加と性的受容性のピークが連動する。H Ingrahamたちは今回、エストロゲンがエネルギー配分にどのように影響するかを研究するために、雌マウスの脳でエストロゲン受容体α(ERα)シグナル伝達について調べている。その結果、メラノコルチン4受容体(MC4R)を発現するニューロンの小集団が見つかり、このニューロン集団がエストロゲンシグナルとメラノコルチンシグナルを統合していることが明らかになった。カギとなる知見として、これらのニューロンが覚醒中枢にシグナルを送り、ホルモンがどのようにして活動量の急増を引き起こすかが示された。さらに、これらのニューロンのエストロゲン依存的ゲーティングを迂回すると、ホルモンの枯渇に関連した低活動状態や低代謝が打ち消されることも分かった。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-02725-x

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-04010-3

9

ミトコンドリアへのグルタチオン運搬の調節因子

Nature 599 2021年11月4日

グルタチオン(GSH)は、細胞内の主要な抗酸化物質であり、細胞質ゾル内で産生されるが、GSH合成系を持たないミトコンドリアのような他の細胞小器官にも存在する。ミトコンドリアへのGSHの運搬を行う輸送体は、まだ解明されていない。今回K Birsoyたちは、SLC25A39とそのパラログのSLC25A40が、ミトコンドリアへのGSHの運搬に必要であるという証拠を示している。SLC25A39/40が失われると細胞増殖に異常が生じ、鉄代謝をはじめとする代謝の乱れにつながった。この代謝の乱れは、GSHが、酸化還元の緩衝剤としてだけでなく、ミトコンドリアの鉄–硫黄クラスターのメディエーターとしても進化してきたとする考えを裏付けるものである。マウスでは、SLC25A39/40が赤血球の発生に必要であることも分かった。SLC25A40がGSHを直接輸送するという証拠は得られていないが、この研究によってGSH輸送体を特定する今後の研究への道が開かれた。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-04025-w

10

クローズアップして3Dで見る細胞

Nature 599 2021年11月4日

現在の電子顕微鏡技術では細胞を非常に近くから見ることができるが、この方法では細胞の1枚の薄切片、あるいは比較的小さな体積の画像しか得られない。今回ハワード・ヒューズ医学研究所からの2報の論文により、集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を使って細胞や組織試料を4 nmあるいは8 nmの近等方ボクセルサイズで近等方に解像して、3D画像化したことが報告されている。これは、画像化可能な体積が従来より最大で2桁大きくなったことを意味する。この目的に向かって研究チームは、深層学習をベースとする解析パイプラインを開発し、35種類もの細胞小器官の包括的自動化再構築を行った。今回得られたデータセットは、ウェブリポジトリOpenOrganelleを介して自由に利用できる。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-02776-0

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03977-3

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03992-4

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