Nature ハイライト

保全生物学:統治が湿地の生物多様性に及ぼす影響

Nature 553, 7687

宮島沼(北海道美唄市)の上空を飛ぶマガン(<i>Anser albifrons</i>)の群れ。マガンは、今回の研究で西アジアにおいて個体数の減少が示された水鳥の1種である。
宮島沼(北海道美唄市)の上空を飛ぶマガン(Anser albifrons)の群れ。マガンは、今回の研究で西アジアにおいて個体数の減少が示された水鳥の1種である。 | 拡大する

Credit: Tatsuya Amano (amatatsu830@gmail.com)

湿地は、地球上でも特に生物多様性が豊かで生産力の高い生態系だが、極めて深刻な脅威にさらされてもいる。天野達也(英国ケンブリッジ大学)たちは今回、世界各地の2万5769地点で収集した調査データを用いて、水鳥461種の1990~2013年の個体数の変化と、そうした変化の駆動要因を調べた。その結果、群集レベルの個体数の減少は、西アジア、中央アジア、サハラ以南のアフリカ、南米などで最も大きいことが分かった。群集レベルの個体数変化の最も有力な予測因子は統治であり、統治の有効性が低い地域では個体数の減少がより急激だった。保護区に指定された湿地が広範に及ぶほど水鳥の個体数が増加していたが、この傾向は統治が有効な地域に限られていた。これらの知見は、生物多様性保全のための保護区の効果は、統治が有効な状況でしか得られないことを示唆している。

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