Nature ハイライト

Cover Story:二重の保護:がん化への道を阻む細胞老化とクライシスという障壁の仕組み

Nature 522, 7557

表紙は凝縮した有糸分裂染色体(青色)を示すイメージ画。テロメアTTAGGG反復配列(緑色)とDNA損傷マーカー(赤色)は共局在しており、これはクライシス中に有糸分裂を自発的に停止した細胞では、テロメアが損傷と認識されることを示している。腫瘍を形成中の細胞は2つの障壁を乗り越えなければ、がん細胞になれない。1つ目の障壁は老化であり、2つ目はクライシスとして知られる増殖遮断である。老化を免れた細胞は、通常はクライシスの間に死ぬが、この段階で細胞死を引き起こすものが何なのかは明らかになっていない。今回、J Karlsederたちは、p53非存在下で老化を免れた細胞ではテロメアが短縮して融合し、この融合が有糸分裂遅延を引き起こすことを明らかにした。有糸分裂の停止中にテロメアはさらに脱保護され、これをDNA損傷装置が検出すると細胞死が誘導される。有糸分裂中にテロメア脱保護が進むと、がん細胞は有糸分裂阻害薬に対して感受性となることから、今回の結果は臨床での治療に使える可能性がある。だが、有糸分裂の停止はチェックポイントの損なわれた細胞でのゲノム不安定性と腫瘍形成に関連することも知られている。

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