Nature ハイライト

神経科学:新しい全脳マッピング情報資源

Nature 508, 7495

頭頂部から見たマウス脳の3D神経接続パターン。
頭頂部から見たマウス脳の3D神経接続パターン。 | 拡大する

Credit: Allen Institute for Brain Science

オバマ米大統領のBRAIN(高度で革新的な神経工学による脳研究)イニシアチブが2年目に入ったのに伴い、今週号には「ビッグサイエンス」な資源を集結させた2編の画期的な論文が掲載されている。H Zengたちは、哺乳類動物(実験用マウス)の脳全体にわたる中規模のコネクトームを初めて明らかにした。これは軸索投射の細胞種特異的追跡に基づくものである。完全な神経系の配線図は、小型の生物である線虫ではずっと以前から利用可能だったが、もっと大型の動物での神経接続に関するデータはまだ不完全だった。今回得られた、新しい三次元アレン・マウス脳接続アトラス(Allen Mouse Brain Connectivity Atlas)は全脳での接続マトリックスであり、脳の各領域が連絡し合う仕組みについての手がかりを提供してくれるだろう。このプロジェクトで得られたデータの多くはヒトでの神経ネットワーク研究に関連してくるだけでなく、ヒト脳での神経接続や脳疾患へのその関与についての解明を進める助けとなりそうだ。一方、E Leinたちは、妊娠中期のヒト脳について、レーザーマイクロダイセクションとDNAマイクロアレイ技術に基づき、高い空間分解能の転写アトラスを作成した。ヒト脳の構造と機能は、遺伝子発現を開始させる出生前転写過程によって大部分が決まるのだが、発生途上の脳に関する我々の理解は限られたものだった。新しいデータセットにより、ヒト進化の過程で起こった新皮質の大幅な拡大に関連する発生過程で見られる転写の特徴が明らかにされ、新皮質の胚芽帯もしくは有糸分裂後ニューロンが、神経疾患や精神疾患に関連する多くの遺伝子の動的な発現部位であることが示唆された。

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