Nature ハイライト

生物地球化学:白亜紀/古第三紀境界の後の回復期間

Nature 574, 7777

白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界におけるチクシュルーブでの小惑星衝突は、恐竜を絶滅させただけでなく、全球の生態系にも著しい影響を及ぼした。例えば、炭素を海面から深海底へと輸送する「炭素ポンプ」にも大規模な破壊が起こったが、最近の一部の研究からは、こうした炭素ポンプは衝突から約170万年後までに回復したことが示唆されている。これに対し、種の多様性によって評価される生態系の回復には、最長で1000万年を要したことがよく知られている。今回S AlvarezとS Gibbsたちは、K/Pg境界が非常に細かく(1万3000年単位で)記録されている国際深海掘削計画(ODP)の掘削コアから得られた、石灰質ナノプランクトンの極めて詳細な記録を提示している。この記録からは、石灰質ナノプランクトン群集では、衝突の約200万年後まで極めて不安定な状態が続き、その後ほぼ安定した状態に回復してさらなる大半の摂動に対して復元力を備えるようになったが、種の豊富さは低いままだったことが明らかになった。それらの時期からは、安定性の回復と炭素ポンプの回復とが同時に起きていたことも示唆された。

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