Nature ハイライト

材料化学:高エントロピー合金中に立つ波

Nature 574, 7777

詳しく研究されている高エントロピー合金(HEA)であるCrMnFeCoNi合金を作り上げている元素は全て、周期表の第4周期の遷移金属であり、サイズと電気陰性度がよく似ている。その結果生じるHEA中の元素分布は無秩序で、クラスター化は観測されない。では、それら元素の1つをサイズと電気陰性度が異なる別の元素と交換すると何が起こるだろうか。今回R Ritchieたちは、マンガン(Mn)をよりサイズが大きく電気陰性度の高いパラジウム(Pd)に交換すると、PdだけではなくHEAの全ての元素の分布に初期濃度波が形成されることを、高分解能EDSマップによって明らかにしている。同じ合金でMnの代わりにアルミニウム(Al)を含めたときや、中エントロピー合金CrCoNi中へタングステン(W)を導入したときにも同様の結果が見られた。Pd合金をさらに調べて、こうした原子スケールの構造変化が、転位すべりに対する著しい耐性、転位の累積、そしてその結果生じる交差すべりの「降雨」(supplementary movie参照)と二次交差すべりにつながることが明らかになった。室温では、こうした変形機構は、降伏強度の増大、ひずみ硬化、引張延性に寄与する。

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