Interview

余震はいつ止むのか?

Scientific American () | 日経サイエンス 6月号掲載(4月25日発売)

日本の地震活動をどう見ればよいか、不透明さが増している4月7日にはマグニチュード7.1の大きな余震が発生した余震はいつ止むのか、そして将来は……
Scientific American がカリフォルニア州工科大学の地震学者ヒートンに聞いた

語り:T. ヒートン(カリフォルニア州工科大学)
聞き手:K. ハーモン (Scientific American オンラインニュース・リポーター)

度重なる余震が日本を揺さぶり続けている。4月7日午後11時32分に起きたM7.1の余震はこれまででも最大級だったが,幸い大きな被害の報告はなく,発生直後に発令された津波警報は2時間以内に解除された。

日本は環太平洋火山帯に位置しており,地震が多発する。しかし3月11日に起きたM9.0の地震は同国の記録に残るなかで最大のものだった。そして,地震にかねて備えてきたこの国にあっても,多くの地震学者はこれほどの巨大地震は予想していなかった。

しかし東日本大震災は壊滅的な津波を引き起こし,現在も放射能漏れが続く東京電力福島第1原子力発電所を破壊しただけでなく,この地域の断層帯の本性に関する多くの推定をも揺るがしている。

日本の地面はいつ落ち着きを取り戻すのか? 科学的見通しはいまだに不確定だ。しかしカリフォルニア工科大学地震研究所所長のヒートン(Thomas Heaton)は,同地域でこれから起こりそうな事象と,M7.1の余震がなぜ驚くに当たらないかを説明してくれた。以下はインタビューを編集したものだ。

東日本大震災の震源地 | 拡大する

国土地理院・JAXA

─3月11日のM9.0の大地震以降,かなり大きな余震がいくつかありました。強い余震がこれほど長く続くのは異例では?

いや,ごく普通だ。余震に関するこれまでの統計データでは,本震よりもマグニチュードの値が1小さな余震が平均で1回,マグニチュードが2小さな余震が同10回起きている。だから,これまでの経過はM9の地震においては典型的なものだ。ただし,これは平均的な統計の話であって,地震というものはどれもみなそれぞれ違う。

─4月7日のM7.4を上回る大きな余震が起こる可能性は?

平均すると,地震の20に1つは「前震」であるので,3月に起こったM9の大地震が1つの前震である可能性は確かにある。しかし,以降の地震発生状況を見ると,その可能性はそう大きくはない。

ただし,日本海溝は世界で最も活発な沈み込み帯の1つであり,今回の一連の経過は非常に独特なものだといえる。歴史的に見ると,日本海溝での地震活動は断層による地震活動に比べると少なかった。同海溝での地震活動が少なかったので,日本の地震学者はここを地震の危険が比較的小さな地域として分類していた。これに対し,私を含む米欧の地震学者の幾人かは疑問を抱いていた。

ここのプレートが過去1000年にわたって固着してきたとすれば,膨大な量の歪みが蓄積していると考えられる。そして,今回の地震はそれを解放したといえるほど大きなものではないだろう。そこで疑問が残る。つまり,残りの断層すべりがどこで生じるかだ。

─どこまでが余震で,どこからが新たな地震として区別されるのでしょう。発生時期や規模による線引きがあるのですか?

余震と呼ぶか別の地震と呼ぶか,実のところ決まりはない。どの地震も,その地域に新たな地震を起こす引き金になりがちだ。余震と呼ぶのをどの時点でやめるか,意見はいろいろある。いまでもミズーリ州近辺で小さな地震が起こると,それを1812年の地震の余震だという人もいるほどだ。

─もしこの地域でもっと大きな余震が起きたら,やはり津波が発生するでしょうか?

M9の地震は常にどこかに大津波を引き起こすことがわかっている。大地震で大量の海水が動くのはほぼ確実だが,津波にとってカギとなるのは動いた水の量だ。マグニチュードの値が1上がるごとに,それは 30倍になる。だからM8とM9では大違いであり,M9なら巨大津波の発生は確実だ。

米国の人々にとって今回の地震の大きな意味は,海溝型の巨大地震が先進国で起こるとどうなるかを実際に目の当たりにしたことだ。米国太平洋岸北西部でさらに大きな地震が起こりうる確かな証拠がある。M9の大地震が起きたら,当該地域の人々すべてに甚大な影響が及ぶ。津波,地上施設の損壊,その後も長く続く大きな余震――非常に深刻な事態になる。

─日本周辺の地震活動に関してわかったことをもとに,次にどこで地震が起きそうか予測できますか?

今回の断層すべりのほとんどは日本海溝の北部で起こったとみられる。そして,少なくとも過去20年は,南部と北部は固着してきたようだ。だから,非常に単純化していえば,今回の地震で北部は歪みの多くを解放しただろう。だが,この系を私たちがよく理解していないことも明らかだ。

─すると,地震で断層の一部がずれたからといって,その断層の他の部分にさらにプレッシャーがかかってずれやすくなっていると考えるのは,あまりに単純すぎる?

それは単純化しすぎだ。しかし正直なところ,私たちの現在の理解について詳しく検討したなら,標準的な数々の理論に欠陥がすぐに山ほど見つかる。地震のプロセスに関してはたくさんの大きな謎が残っている。

こうした系で何が起こりうる,あるいは起こり得ない,という論評を聞くたびに私は非常に不愉快に思う。私たちの知識はとても初歩的で,おそらく甘いと思う。

─今回の地震域と日本の地震活動の短期的な将来見通しについては?

M9級の他の地震を見ると,多数の余震が起きている。平均するとM9の地震に対してM8の余震が1回ある。今回は実は本震のデータの中にM8の地震が1つ隠れていた。余震はM7級が10回,M6級が100回といった具合に起こるだろう。それが典型的なパターンだ。

2004年のスマトラ島沖大地震では1カ月ほど後にM8.7の地震が起きたほか,これまでに多数のM8級地震がスマトラ島地震よりも南の場所で発生してきた。ある意味,この一帯は数年間,火がついた状態にあった。だから,今回もことが終了したといえる科学的な理由はない。概していえば,M9の地震は最大のものであり,普通は別の場所で起こることはないだろう。しかし,それさえもわからないというのが,本当のところだ。

─今回の震源域に関して未解決の大問題は?

この領域の断層が主に地震によってずれているのか,あるいはもっとゆっくりしたプロセスによってずれているのかという大きな疑問がある。後者には常に少しずつ滑るものと,大きくてゆっくりした地震が時おり起きて数日から数週間続くと考えられているものがある。主に地震なのか主にゆっくりしたプロセスによるのか,この点については何もわかっていない。

この領域では過去1000年にわたって大きな地震がなかったので,多くの人はこの領域が定常滑りかゆっくり地震を起こしてきたに違いないと考えていると思う。しかし今回の大地震が起こったいま,その見方が誤りだったのは明らかだ。

今回の地震は,地震から身を守るための手法にも疑問を投げかけた。私たちはある種の確率的な地図を使って地震の危険を表すことが多い。この地図に基づいて,どう対応するか対策の優先順位を決めている。しかしあいにく,近年の多くの大地震は危険度が低いとされていた地域で起きてきた。私にとってこれは,興味深い統計の問題だ。次にどこでどんな規模の戦争が起こるか,あるいは次にどこでどのくらいの規模の感染症流行が起こるかを予測しようとするのに似ている。現在私たちが使っているのは心臓発作のリスクモデルのようなものだが,予測すべき問題は鳥インフルエンザの流行に近い。

─巨大地震とそれに続く大きな余震。この種の出来事に技術者や地震学者が備える方法はありますか?

本当に巨大な地震はまれなので,そのときの地面の揺れがどうで,それに耐える建物を造るにはこうすればよい,というふうに技術者が語るすべはない。M9巨大地震の地上観測データ記録が得られつつあるのは今回が初めてであり,私たちはみなそれに注目している。

しかし,データが入手できた段階で誰もが「さあ,これでM9巨大地震がどんなものかわかった」と言いはしないかと,私は少し気がかりに思っている。1つの例を見たことにはなるが,まだすべてを見たわけではないのだ。今回,破壊のほとんどは陸地から遠く離れたはるか海底で起こった。私の見方では,この距離のおかげでダメージはこれでも実に軽くてすんだ。

20年間固着していた断層の一部が陸に近づいたように見える。この部分は建物が多く立っている仙台から房総半島に至る領域にずっと近い。

私たちの目から見て一連の出来事で本当に興味深かった部分は,日本が緊急地震速報システムの運用を始めていた(それもちょうど2年前に)ことだ。どこかが揺れ始めたのをキャッチして,強い揺れが到達する前に人々に警報する。このシステムは今回の地震で実際にうまく働いた。仙台では警報から揺れ到来までに10秒,東京では1分近い猶予時間が生じた。

警告を与えるいくつかの新手段がすでにあるということ,そして今後何が起きようとしているかについていくらかの考えがあるということは,以前にはなかった新しい状況だ。

(翻訳:日経サイエンス編集部)

注)4月7日昼,米国地質調査所は今回の余震のマグニチュードを当初発表の7.4から 7.1.に引き下げた。ブログ記事公開後に発表されたこの修正を受け,この記事では最初の段落のみマグニチュードを7.1に書き換えてある。

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