Nature ハイライト

幹細胞:幹細胞による肺の再生

Nature 517, 7536

H1N1インフルエンザウイルスで損傷を受けた肺の細胞集団における、幹細胞(青色)の系譜追跡。
H1N1インフルエンザウイルスで損傷を受けた肺の細胞集団における、幹細胞(青色)の系譜追跡。 | 拡大する

Credit: Dr. Wei Zuo

肺組織を大量に失った患者が、その後どの程度回復できるかは分かっていない。しかし、臨床経験から、肺に壊滅的な損傷を負った後、小児でも成人でも肺が大規模に再生され得ることが明らかになっており、また、マウスを使った以前の研究では、H1N1インフルエンザウイルスによる損傷後に観察された再生過程と、末梢気道に存在する細胞集団との関連が示されている。今週号の2報の論文では、肺の内表面を覆う上皮細胞が損傷すると、希少な幹細胞集団が誘導されて増殖し、損傷部位へと移動して、そこで複数の細胞タイプに分化することが示された。F McKeonたちは、インフルエンザウイルスへの曝露後に、マウス末梢気道の希少な細胞集団が増殖することを報告している。これらの細胞は、移植後に肺の再生を助けることができ、また細胞培養で固有の細胞系譜拘束を維持することから、このような細胞集団を使った幹細胞治療が有望であることが示唆される。H Chapmanたちは、細胞系譜追跡により、マウスの末梢肺に存在する静止期の細胞集団がブレオマイシンまたはインフルエンザウイルスによる損傷後に活性化されることを明らかにした。これらの細胞は、サイトケラチン5を発現しており、Notchシグナル伝達経路を介して上皮を修復するが、この状況でNotchシグナル伝達が持続すると、嚢胞形成が引き起こされる。肺繊維症の患者からのデータでも、Notchの過剰活性化と、同様の嚢胞の存在が示されている。

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