Nature ハイライト

生物物理:HIVのひっくり返る酵素

Nature 453, 7192

ヒト免疫不全症ウイルスは逆転写酵素という不可欠なタンパク質をコードしており、これはAIDS治療薬の主要な標的となっている。この酵素には、ウイルスRNAゲノムを鋳型とするDNA合成と、DNA-RNAハイブリッドの開裂という2つの機能がある。どちらの機能にも、酵素がDNAとRNAの両方に結合することが必要だ。しかし、酵素は基質上でどちらの活性を発揮すべきかを、どのようにして知るのだろうか。単一分子計測技術により、酵素はRNAとDNAとに異なる配向で結合し、基質から離れることなく配向と活性を切り替えられることが示された。切り替え動態は、主要な抗HIV薬である非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤によって強力な調節を受ける。このことから、これらの薬がウイルス複製を阻害する機構が示唆される。

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