Nature ハイライト
		
		
        
		
		生化学:多サブユニットタンパク質複合体が進化の長い時間にわたって維持される訳
Nature 588, 7838
細胞のタンパク質の大多数は、2つ以上の複数のサブユニットからなる複合体を形成する。そしてタンパク質は、このような多量体化によってより複雑な機能を果たせるようになると広く考えられている。この説明は確かに一部の複合体には当てはまるが、多量体化によって既知の何らかの機能が高まることが知られていない複合体は多数存在する。「定着」と呼ばれる中立進化仮説では、進化の過程で多量体複合体がいったん確立されると、逆への進行は難しい可能性があると考えられている。その理由は、多量体界面では中立であるアミノ酸置換が、単量体の状態では有害になる可能性があるからである。今回G Hochbergたちは、多量体の界面に疎水性残基が蓄積して多量体化を維持するという、定着の生物物理学的機構を示している。こうした界面が定着するのは、この界面の機能への寄与は検出可能な程度ではないものの、これが露出するとタンパク質の安定性が低下して凝集を引き起こすからである。この研究は、多くの多量体複合体は、多量体化に機能的な用途がない場合であっても、進化の長い時間にわたって持続することを示している。
2020年12月17日号の Nature ハイライト
- 精密測定:光ピンセット原子時計を目指して
- 精密測定:エンタングルメントによる時間測定の改善
- 高分子化学:分子のパッチワークを織り上げる
- 水文学:ヨーロッパの川を寸断する100万を超える障壁の広大なネットワーク
- 生態学:人工物の質量が生物量を上回る
- 遺伝学:ヒト心臓の単一細胞アトラス
- 免疫学:改変型モノクローナル抗体によるFcRを介した防御性CD8+ T細胞応答の増強
- コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイクタンパク質のin situ構造
- 生化学:多サブユニットタンパク質複合体が進化の長い時間にわたって維持される訳
- 構造生物学:不活性なミオシンモーター


