Nature ハイライト

コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイクタンパク質のin situ構造

Nature 588, 7838

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の細胞への侵入は、そのウイルス粒子を取り囲む脂質二重層から突き出たスパイクタンパク質三量体によって仲介される。これらのスパイクタンパク質は、細胞受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して、ウイルス膜と細胞膜の融合を駆動する。スパイクタンパク質はまた、ワクチンの標的でもあり、従って、ウイルス粒子表面でのスパイクタンパク質の構造を理解することは重要である。これまでの構造研究では精製スパイクタンパク質が調べられてきたが、今回J Briggsたちは、ウイルス粒子表面上のスパイクタンパク質三量体のin situ構造を報告している。意外にも、この三量体は、開いた状態と閉じた状態の両方の融合前コンホメーションで存在していて、三量体のごく一部は融合後コンフォメーションでも存在するようである。これらの知見は、感染時やワクチン接種時におけるスパイクタンパク質と中和抗体との相互作用の理解に関係し、ワクチン設計のための情報をもたらすだろう。

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