Nature ハイライト

細胞生物学:溶解酵素のDYRK3は液相分離を解消させる

Nature 559, 7713

膜のない細胞小器官は、液–液相分離という生物物理現象を介して形成される。細胞の有糸分裂の際には、このような小器官は核膜の崩壊とともに見えなくなり、有糸分裂が完了すると再び出現する。L Pelkmansたちは今回、キナーゼのDYRK3がこの過程で重要な役割を担っていることを明らかにした。DYRK3の発現は有糸分裂開始時に増加し、「溶解酵素」として働いて、スプライシングに関わる核スペックル、ストレス顆粒、中心小体周辺物質などの膜のない複数種の細胞小器官を溶失させる。有糸分裂の終了時には、APC/C複合体の働きによってDYRK3の分解が起こり、このような細胞小器官の再形成が可能になる。さらに、有糸分裂の際にDYRK3を阻害すると、異常な区画(相分離した融合体)の形成や、紡錘体の過剰な核形成が引き起こされることも明らかになった。

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