【生態】ありふれた野生のミツバチが最大の経済的利益をもたらす
Nature Communications
2015年6月17日
ミツバチによる作物の花粉媒介を調べたところ、最も一般的な野生のミツバチ種のわずか2%が、花粉媒介全体の約80%を担っていることが判明した。この結果は、経済的に重要な生物種だけを保全する場合と極めて多様な生物種を保全する場合では、それによって得られる利益が異なることを示している。こうした新知見の報告が、今週掲載される。
生物多様性のレベルが高くなると、生態系の機能と安定性に及ぼす利益が大きくなり、その機能の一部は人類にとって経済的に有益なことが知られている。ただし、こうした経済的に重要な生態系サービスが、それをもたらす生物種の多様性にどの程度依存しているのかという点は明確になっていない。
今回、David Kleijnたちは、5大陸(ヨーロッパ、北米を含む)の野生のミツバチの研究(90件以上)によるデータを組み合わせて、研究対象となった生物種(785種)から作物の花粉媒介による経済的利益の最も大きい種を発見するための解析を行った。その結果、野生ミツバチ群集の作物生産に対する寄与は平均でヘクタール当たり3,000米ドル(約36万円)以上となり、飼育下のミツバチコロニーの経済的寄与と同程度であることが明らかになった。ただし、野生のミツバチによる作物花粉媒介サービスの大半が最もありふれた野生ミツバチ種のほんの一部によって行われていることもKleijnたちは指摘している。
もし経済的利益の増加が目標であれば、生態系サービス(例えば、作物の花粉媒介)の大半を提供しているわずかな数の生物種を直接目的とした保全活動が優れた戦略となることが今回の研究結果によって示唆されている。しかし、目標を生態系の機能および安定性の向上とした場合、そのような戦略は絶滅危惧種や生物多様性の保全と両立しない可能性が高いため、適切ではないと考えられる。
doi:10.1038/ncomms8414
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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