Research Press Release

生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連している

Nature Ecology & Evolution

2025年8月12日

気候変動に起因する極端な高温は、1950年以降に観察された熱帯の鳥類個体群において、平均で25 –38%の減少を引き起こしたことを報告する論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。この結果は、気候変動が、土地利用の変化などの直接的な人為的影響がなくても、熱帯地域の鳥類の個体群の存続をすでに脅かしていることを示唆している。

熱帯地域には全鳥類種のほぼ半数が生息しており、生物多様性が豊かで、多くの種が温度耐性の限界に近い状態で生活している。産業革命以来、多くの鳥類種は狩猟、生息地の喪失、および外来種の拡散により減少または絶滅した。気候変動が鳥類に影響を与えることは知られているが、特に他の人為的圧力の影響を受けていない熱帯の個体群を含む場合でも、気候変動の累積的な影響——特に熱波——は依然として十分に定量化されてこなかった。

世界中の鳥類の個体数減少のうち、人為的な気候変動に起因する割合を評価するため、Maximilian Kotzら(バルセロナ・スーパーコンピューティング・センター〔スペイン〕)は、1950年から2020年にかけて世界中で長期的にモニタリングされた3,000以上の鳥類個体群、90,000件以上の観察データを解析した。著者らは、統計モデルを用いて、気候極端現象の影響を他の要因から分離した。その結果、平均気温や降水量の変化は重要性が低いものの、極端な熱波(歴史的な気温の99パーセンタイルを超える日)への曝露が、特に熱帯地域において鳥類の年次個体数増加率の低下と強く関連していることが判明した。熱波の影響は、異なるモデル手法、分類群、および渡り行動において一貫して確認され、人間活動による熱の強化の累積的影響は、観察された熱帯個体群における直接的な人為的圧力を上回る規模であった。

これらの結果は、気候変動の脅威が拡大していることを示し、極端な高温が熱帯鳥類の減少に重要な役割を果たしていることを明らかにしている。今後は生息地保全とともに、酷暑など気候極端への対応を視野に入れた保全戦略が求められるとともに、これらの影響をさらに悪化させないための温室効果ガス排出削減の重要性が強調されている。

  • Article
  • Published: 11 August 2025

Kotz, M., Amano, T. & Watson, J.E.M. Large reductions in tropical bird abundance attributable to heat extreme intensification. Nat Ecol Evol (2025). https://doi.org/10.1038/s41559-025-02811-7
 

doi:10.1038/s41559-025-02811-7

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