【生態】危険分散をする侵入種のナミテントウ
Nature Communications
2015年6月3日
侵入種のナミテントウは生殖開始年齢が低く、かつ他の在来種より長期にわたって生殖を続けることを報告する論文が、今週掲載される。この戦略は、ナミテントウが世界で最も繁栄した侵入種の1つである理由を説明する上で役立つと考えられている。
生活史は、生物個体が誕生してから死亡するまでに起こる一連の重要な事象(例えば、生殖の開始と寿命)からなり、自然選択、性選択又はその両者によって形作られる。新しい環境に応じた生活史の変化を解明することは、侵入種の繁栄を解明する上で中心的な意義を有している。侵入種は、生活史が相対的に短いことに加え、生殖開始年齢が低く、寿命が短いと長い間考えられていた。ナミテントウは、これまでにさまざまな気候条件と生態学的条件の環境に侵入しており、侵入に対応した生活史の変化を研究する際の格好の材料となっている。
今回、Benoit Faconたちは、共通の環境下におかれたナミテントウのさまざまな個体群(在来、生物的防除、侵入)の成体の生活史を比較して、侵入時の生活史の変化を調べた。生物的防除のための個体群(100世代にわたって捕食者のいない環境で飼育され、餌を自由に摂取した個体群)は寿命が短く、生殖寿命も短かったが、侵入種は、より多くの資源を生殖に投下し、寿命が長く、長期間にわたって生殖を続けた。その結果、より長い期間にわたって生殖を試みることができるので、この侵入種の戦略は、いろいろな環境に対する適応である可能性がある。今回の研究では、生活史が急速に変化することがあり、侵入過程における生活史の変化が、侵入者が新しい環境で経験する条件によって調節されることが明らかになった。
doi:10.1038/ncomms8268
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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