Research Press Release

アルツハイマー病に関わるタンパク質が健常高齢者の睡眠関連記憶を乱す可能性

Nature Neuroscience

2015年6月2日

健康な高齢成人において睡眠の関連する記憶の強化を前頭前皮質におけるβアミロイド(Aβ)の蓄積が乱すかもしれないという報告が、今週掲載される。すでにAβの蓄積は、アルツハイマー病と加齢における記憶障害を導く仕組みと目されており、この研究は、健康な加齢において睡眠の撹乱に関連する認知機能の減退の役割に光を投げ掛けるものである。

Matthew Walkerたちは、70歳から79歳の健常成人26人について、一晩の睡眠前後で対にした単語を思い出す能力を研究した。睡眠中の被験者の脳波を記録し、誘導fMRIとPETスキャンにかけた。研究の結果、内側前頭前皮質という脳領域にAβが過剰に蓄積していると、ノンレム(非 急速眼球運動、NREM)睡眠時の脳の徐波活動が減少する状態と記憶障害の増加を予測できた。Walkerたちは、こうした蓄積がNREM睡眠時の脳の徐波活動を乱し、Aβの誘導する撹乱がひいては長期記憶の固定を直接損なうことを示唆している。

この研究はNREM睡眠の撹乱と記憶減退の原因要因としてAβの蓄積を特定できたわけではないが、認知機能の減退に関わる重要な要因として睡眠障害を浮かび上がらせ、Aβ病態に付随する加齢に伴う認知機能の減退を和らげるための治療的睡眠介入を開発できる可能性を示している。

doi:10.1038/nn.4035

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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