Research Press Release
【肥満】体内での脂肪の燃焼を促進する新たな薬物?
Nature Communications
2015年5月27日
Obesity: A potential fat-burner
肥満マウスの体内における余分なカロリーの燃焼を引き起こし、減量を促進する薬物について報告する論文が、今週掲載される。この薬物には、マウスの褐色脂肪とベージュ脂肪を増やす作用のあることが分かったのだ。褐色脂肪とベージュ脂肪は、脂質分子を燃焼して熱を産生することに特化している。
今回、Alexander Pfeiferたちは、肥満マウスの体内における褐色脂肪とベージュ脂肪の生成が、可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)という酵素によって駆動される細胞内シグナル伝達経路によって活性化されることを明らかにした。また、sGC刺激剤を肥満マウスに実験的に注入したところ、脂質の燃焼量が増え、その結果、白色脂肪(貯蔵脂肪)が減少したためにマウスの体重が減った。
sGC刺激剤は、ヒトでは検証されていない。しかし、Pfeiferたちは、sGC刺激剤が肺高血圧症の治療薬として最近承認されたリオシグアトと同じクラスの薬剤であり、化学的に類似していることから、安全性プロファイルも良好な可能性があると考えている。さらに、Pfeiferたちは、今回の研究結果から肥満と一部の肥満関連疾患の治療薬の候補が得られることを期待している。
doi:10.1038/ncomms8235
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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