ヨーロッパに侵入したブタクサの花粉によるアレルギー患者の増加
Nature Climate Change
2015年5月26日
今後数十年でヨーロッパの大部分の地域で空気中のブタクサの花粉の量が増える可能性が高く、その結果、アレルギー疾患の有病率が上昇する可能性のあることを示唆する論文が、今週掲載される。今回の研究では、予想される花粉の増加量の3分の1の原因が持続的な種子散布であり、残りの3分の2の原因が気候変動と土地利用の変化であると推測されている。
ヨーロッパでは、北米原産のブタクサ(Ambrosia artemisiifolia)が侵入外来種として急速に広がっている。素因のある者の体内にブタクサの花粉が入ると、アレルギー反応が起こり、目のかゆみ、くしゃみといった症状が現れ、重い症例では呼吸困難も起こる。
今回、Lynda Hamaoui-Laguel、Robert Vautardたちの研究チームは、ヨーロッパでの今後のブタクサの蔓延と年間花粉量に対する土地利用の変化と気候変動の影響を評価するために、種子散布、花粉の生成、風による花粉の飛散の変化を組み込んだモデルを作成した。そして、このモデルによるコンピューターシミュレーションが行われ、平均地球温暖化が急速に進行するシナリオと緩やかに進行するシナリオのいずれにおいても、空気中のブタクサ花粉の濃度が2050年までに平均で現在の4倍(種子散布速度の変化による誤差として2~12倍)に達すると予測された。すでに影響を受けている多くの地域で空気中の花粉濃度のさらなる上昇が予測されているが、現在の花粉量がほぼゼロのヨーロッパ中部・北部、フランス北部と英国南部で花粉量の大幅な増加が予測されている点が注目される。
doi:10.1038/nclimate2652
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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