Research Press Release
実は加速していた全球的な海水準上昇
Nature Climate Change
2015年5月12日
全球的な海水準上昇は、従来の方法による推定結果に反して、過去10年間にわたって加速していたとする論文が、今週のオンライン版に掲載される。人工衛星からのデータを調べた過去の研究では、海水準の上昇が過去10年間に鈍化したという結論が示されていたが、海水準を計算する際に土地垂直変動(VLM)を考慮に入れていなかった。
今回、Christopher Watsonたちは、GPS観測によるVLMと全球の海洋全体に設置された検潮器のネットワークから1時間に一度送られてくるデータを組み合わせて、人工衛星による海水準の測定結果の不正確な点を明らかにし、補正した。その結果、1993年から2014年半ばまでの全球的な平均海水準上昇の全体的速度が年間3.2 mmから2.6~2.9 mmに下がった。
この補正の影響を最も大きく受けたのが最初の6年間(1993~1999年)で、平均海水準上昇速度の推定値が年間0.9~1.5 mm低下した。今回の再計算の結果、近年の海水準上昇速度は20世紀と比べると実は加速していたことが判明した。Watsonたちは、こうした加速が、同時期のグリーンランドと西南極の氷床の融解による寄与とかなり一致しており、最近のモデル予測とも整合性があるという考え方を示している。
doi:10.1038/nclimate2635
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
音楽:1973年以降、人気楽曲の歌詞はよりネガティブになっているScientific Reports
-
海洋生態学:シャチはイルカを追跡してサケを狩るScientific Reports
-
考古学:意図的な火起こしの初期の証拠Nature
-
医学:断食がマウスにおける乳がんのホルモン療法への反応改善と関連するNature
-
遺伝学:14の精神疾患に共通する遺伝的シグナルNature
-
考古学:ローマの建築技術に関する明確な証拠Nature Communications
