【聴覚】大きな騒音が防御反射を引き起こす過程の解明
Nature Communications
2015年5月13日
脳が騒音環境に応じて音の増幅を減少させるという防御反射の引き金が何なのかという長年の謎が、マウスの研究によって解明されたという報告が、今週掲載される。この防御反射は、騒音環境における語音弁別、音源定位、騒音性難聴の予防などに必要なことがこれまでの研究で明らかになっていたが、今回の研究では、この防御反射が耳の中のII型神経線維によって制御されていることが判明した。
音は、内耳の液体で満たされた空洞にある数千個の微小な有毛細胞によって感知され、増幅される。騒音環境では、脳が両耳にシグナルを送って増幅システムを弱くさせる。しかし、今回の研究までは、こうした音が誘発する防御反応が実際に音によってどのように制御されているのかは分かっていなかった。今回、Gary Housleyたちは、耳の中に特定の種類の神経線維(II型神経線維)を持たないトランスジェニックマウスにおいて音が誘起する反射がまったく生じないことを明らかにした。II型神経線維は、耳から脳へ情報を伝えるが、数は少なく、聴覚神経線維の5%にすぎず、その研究が極めて難しいため、II型神経線維の機能については長い間未解明のままになっていた。Housleyたちは、II型神経線維をもたないマウスについて、聴覚閾値が正常だが、大きな音を聞いた時に増幅システムの抑制が見られないことを明らかにした。II型神経線維を持たないことの長期的影響は解明されていないが、今回のマウスの研究では、音によって誘起される反射を制御する役割をII型神経線維が担っていることが明らかになった。
doi:10.1038/ncomms8115
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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