【生態】国境を越えた協力がボルネオ島に明るい未来をもたらす
Nature Communications
2015年4月15日
ボルネオ島を領有するインドネシア、マレーシア、ブルネイの協力があれば、同島においてオランウータンとゾウの生息地を保護するための保全目標を達成できるとする論文が、今週掲載される。こうした統合的な計画手法を用いれば、ボルネオ島の総面積の約50%を森林地帯として維持し、少なくとも430億ドル(約5兆1600億円)の節約ができると考えられている。
ボルネオ島は世界で3番目に大きな島で、そこには数多くの固有種と絶滅危惧種が生息している。同島では、1970年代以降、農業の規模拡大、特にパーム油の増産のために総森林面積が大きく減っている。ボルネオ島は、インドネシア、マレーシア、ブルネイによって領有されており、開発における優先課題がそれぞれの国で異なることから、この3国が協調的に取り組むことに合意するのは難しいと考えられている。
今回、Rebecca Runtingたちは、この3国が保全計画と経済計画の策定作業を統合して現在の目標を達成することによる費用節約効果を定量化した。その結果、協調的な計画手法をとった場合には、「これまで通りの」基礎シナリオと比べて、ボルネオ島の3国全ての領土で、かなりの広さの生息地が確保され、開発目標は達成され、かなりの経済的節約にもなることが判明した。そうした協調的シナリオでは、一部の地域で土地の用途指定を保護区域から農地、または農地から保護区域に変更する必要があると考えられている。
Runtingたちは、政治的境界線を克服することが今後の進展をもたらす上での課題であることを認めているが、今回の研究結果は、高レベルの生物多様性の保全にとって地政学的境界が妨げとなっている他の地域にとっても有用なモデルとなる可能性がある。
doi:10.1038/ncomms7819
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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