Research Press Release
世帯収入と脳構造の関係性
Nature Neuroscience
2015年3月31日
世帯収入が脳の構造に関係するかもしれないとの研究報告が、今週のオンライン版に掲載される。研究では、こうした関連性が低収入世帯の子どもたちの間で最も顕著にみられることが発見された。
社会経済的な地位は認知発達に関連しているが、それが背景をなす脳構造にどのように影響し得るのかは明らかではない。Kimberly Noble、Elizabeth Sowellほかの研究者は、脳構造、世帯収入、親の教育、これらの関係を、3歳から20歳までの典型的に成長している子供や青年1000人を対象に調べた。
Nobleらは祖先から受け継いだ潜在的な脳構造の違いを被験者からDNA試料を集めて調整した。その結果、親の教育と世帯収入両者の増加は、原語や執行機能に関わる脳の表面領域の増加と関連することが分かった。ただし、世帯収入は親の教育よりも強く脳表面領域との正の相関を示すようであった。脳表面領域はまた、作業記憶や執行機能の試験における子供の成績と世帯収入との関連についても部分的に説明するようであった。
これらの発見は社会経済的地位、脳表面領域、そして認知作業の成績の間の関連を示唆しているが、これら要因が互いに影響を及ぼす仕組みについては明らかにされていない。ただし、今回の結果は子どもの社会経済的環境が認知あるいは脳の発達を不変の道筋へと導くことを意味するものではない。
doi:10.1038/nn.3983
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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