Research Press Release

咳止めの薬が2型糖尿病の症状を改善する

Nature Medicine

2015年3月17日

市販の鎮咳薬デキストロメトルファンとその代謝物が、マウスとヒトの糖尿病の合併症を改善するらしいとの報告が寄せられている。この知見は、2型糖尿病の補助療法に結び付く可能性がある。

2型糖尿病の特徴は、インスリンの分泌不足と血中のグルコース濃度の上昇である。広く処方されている抗糖尿病薬では病気の進行は抑えられず、血糖値の極端な低下につながることがあり、それが命に関わる恐れもある。デキストロメトルファンは薬局で買える咳止めの薬の多くに含まれる成分で、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を阻害することによって効果を示し、副作用がほとんどない。NMDA受容体は、インスリンを産生する膵臓β細胞集団で発現されているが、その生理的役割はよく分かっていない。

Eckhard Lammertたちは、正常なマウスやヒトの膵臓の組織サンプルで、NMDA受容体の主要部分を1か所遺伝的に欠失させるか、デキストロメトルファンのような薬剤でその機能を薬理学的に阻害すると、グルコースによってインスリン分泌がより強く刺激されるようになることを発見した。

2型糖尿病のマウスモデルにデキストロメトルファンを投与しても、同様な結果が見られ、血糖値のコントロールも改善した。Lammertたちは、2型糖尿病患者20人を対象にした小規模な第2相前期試験で、デキストロメトルファンが血清中のインスリン濃度を上昇させ、血糖値を下げることを明らかにした。

doi:10.1038/nm.3822

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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