鉄の雨で濃縮された地球マントル
Nature Geoscience
2015年3月3日
初期地球と太陽系内の他の物体との激しい衝突の結果生じた鉄の蒸発は、地球マントルの鉄に富む成分を説明することが出来るかもしれないという報告が、今週のオンライン版に掲載される。これまでは、このような衝突の結果生じた鉄は溶けてすぐに地球の核に沈むと考えられてきた。
2つの固体の間の高速衝突は、高圧の衝撃波を発生させ固体物質を圧縮する。衝撃波の通過後、圧力が十分高ければ物質は蒸発する。
Richard Krausらは、アメリカ合衆国のサンディア国立研究所が保有する世界最強のX線発生装置であるZマシンを用いて、アルミニウムの板を鉄試料に非常に高速で衝突させ、鉄試料を非常に高圧な衝撃圧にさらした。彼らは、鉄を蒸発させるために必要な衝撃圧はこれまで考えられていたよりもずっと低く、惑星形成後期における太陽系内の初期地球と他の物体との高速衝突で容易に到達可能であることを見つけた。著者らは、このような物体の鉄の核は衝突により生成される衝撃圧により蒸発し、その結果生じる蒸気のプリュームは地球全体に分布することを提案している。冷却後には、蒸気は凝結して鉄の雨となり、まだ溶けていた地球のマントルに混合された。
この過程は、この時期までに形成されていたと考えられている月には、同様な激しい衝突にさらされたにもかかわらず鉄に富む物質が欠けている理由を説明出来る可能性がある。著者らは、月の重力が小さいために蒸発した鉄の大部分を取り込むことができなかったと示唆している。
関連するNews & Viewsの記事でWilliam Andersonは、「この研究は地球や他の惑星の進化で高速衝突過程が果たす役割を強調している」と記している。
doi:10.1038/ngeo2369
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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