Research Press Release
肺がんに関わる分子にもう1つの役割
Nature Communications
2015年3月4日
これまで肺がんの進行に寄与すると考えられていた分子が腫瘍を抑制する役割も果たすことがマウスモデルを用いた研究で明らかになった。こうした腫瘍抑制機能は、喫煙歴のある患者に多く見られる変異に特異的に当てはまる。この研究結果についての報告が、今週掲載される。
STAT3という分子は、細胞外からの刺激に対する細胞の応答に介在しており、肺がんにおいて活性化していることが多く、そのためにSTAT3を特異的に阻害する治療薬が開発段階にある。これに対し、今回、Emilio Casanovaたちは、KRAS(がん遺伝子)に特定の変異がある場合(喫煙歴のある肺がん患者に多い)STAT3が腫瘍抑制因子として作用することを明らかにした。また、悪性度が高く、生存率の低い肺がん患者においてSTAT3の発現レベルが低いことも判明した。以上の結果から、特定の状況下ではSTAT3を不活性化させることが有益な治療法とならない可能性が示唆されている。また、STAT3について今回新たに同定された腫瘍抑制機能は、特定の変異のある肺がん患者にとっての新たな治療法の可能性を示している。
doi:10.1038/ncomms7285
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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