【人類の食事】畜乳の消費を示す歯の記録
Scientific Reports
2014年11月27日
ヒトが畜乳を消費していたことの直接証拠が青銅器時代から現代までのヒトの歯石に見つかったという報告が、今週掲載される。こうした証拠は、さまざまな集団における乳製品の消費パターン、そして乳製品の消費行動の進化過程を調べるために利用できる。例えば、中世のグリーンランドでノース人の畜乳の消費量が減少した時期が、ノース人の集団の食事に大きな変化が生じたと推定されている時点と一致していることが歯の記録から判明した。
ヒトは、少なくとも8500年の間、畜乳を食料源として利用してきたが、畜乳の消費量の直接測定は困難で、古代の酪農業の起源、拡大、範囲の詳細な解明が妨げられていた。今回、Christina Warinnerたちは、歯石の中に保存されていた乳清タンパク質であるβラクトグロブリン(BLG)が、畜乳の消費の直接証拠となり得ることを実証した。BLGは、ウシ、ヒツジ、ヤギの乳の消費を区別できるマーカーとなっている。
今回Warinnerたちは、青銅器時代から現代までのヨーロッパ、アジア、アフリカの100件弱の歯の試料を解析し、酪農業の伝統を持つ(ヨーロッパ、南西アジア北部の)集団の歯から乳タンパク質を検出したが、過去の乳製品の消費が非常に少ない西アフリカ中央部で採取された試料からはBLGを検出できなかった。Warinnerたちは、その独自のBLG検出法を用いて、乳製品の消費に影響を与えてきた文化的要因、社会的要因、環境要因を探究できると結論づけている。
doi:10.1038/srep07104
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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