Research Press Release
【遺伝】マラリア原虫がヒトに感染するまでの道のり
Nature Communications
2014年9月10日
ヒトがマラリアで死ぬときは、マラリア原虫の一種である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が原因となっている場合がほとんどだが、熱帯熱マラリア原虫は、有史以前にアフリカの大型類人猿のマラリア原虫から進化した。この熱帯熱マラリア原虫が寄主(ヒト)に感染できるようになった遺伝的適応について解明したことを報告する論文が、今週掲載される。
今回、Matthew Berrimanたちは、熱帯熱マラリア原虫に近縁のチンパンジー・マラリア原虫(Plasmodium reichenowi)の完全ゲノムの塩基配列を初めて解読し、熱帯熱マラリア原虫の寄主(ヒト)への適応のゲノム基盤を調べた。
その結果、チンパンジー・マラリア原虫と熱帯熱マラリア原虫のゲノムがほぼ同じであることが分かったが、マラリア原虫の生活環の赤血球期に関連する遺伝子に有意な差が認められた。つまり、寄主とマラリア原虫との接点、具体的には、マラリア原虫が赤血球へ侵入する時とマラリア原虫に感染した赤血球において表面上の受容体が修飾されて寄主の内皮細胞に接着できるようになる時に関連する遺伝子に変化が生じていた。
さらに、これまで機能が明らかになっていなかった少数の遺伝子が、寄主特異性に寄与する可能性も明らかになった。これらの遺伝子の種分化と寄主への適応に対する相対的寄与度の解明には、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms5754
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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