Research Press Release
酵母によるアヘン剤生産
Nature Chemical Biology
2014年8月25日
モルヒネをはじめ、それに類する天然および半合成の物質を遺伝子組換えで酵母に合成させることができることが、今週のオンライン版に掲載される論文で明らかにされる。この研究は、遺伝子組換えによるオピオイド生産のための重要なステップを示している。
モルヒネなどのアヘン剤は広く医療に利用されているが、その化学的複雑性により、現在の製法は植物体からの抽出に依存しており、商業生産には限度がある。大腸菌や酵母などの微生物によるモルヒネおよび関連分子の遺伝子組換え生合成が実現されれば、生産は大幅に単純化されると考えられる。しかし、生合成経路の遺伝子は全てが同定されているわけではなく、既知の遺伝子も異種宿主で試験されたものはわずかである。
酵母によるアヘン剤生産の可能性を探るため、Christina Smolkeたちは、一連の酵素を酵母に導入し、化学中間体「テバイン」をモルヒネおよび関連分子に転換させた。研究チームは、代謝工学的戦略を利用して、各種酵素の相対的な量を最適化するとともに、それを酵母細胞内で空間的に分離して、さらに複雑な植物細胞内での局在状況を模倣した。最後に、オピオイドに作用するように進化させた細菌から発見された酵素を加えることにより、ヒドロコドンやオキシコドンなど別の産物も得られた。経路全体の構築には研究の進展が必要と考えられる。
doi:10.1038/nchembio.1613
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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