アルツハイマー病にみられるエピジェネティックな変化
Nature Neuroscience
2014年8月18日
エピジェネティックとは外的要因が遺伝子発現に影響する仕組みをいうが、アルツハイマー病(AD)患者の脳内で見られる特定のエピジェネティックな変化がこの病気の病理学的症状に関連していた。今週のオンライン版に掲載されるエピゲノミクス全般に関わる2つの独立した論文で報告されるこの発見は、ADの神経生物学的基礎の研究と可能な治療法の開発にとって新たな対象を提供している。
Philip De Jager、David Bennett、およびJonathan Millたちは、合わせておよそ1200人の個別の患者から得た検死後のAD脳について、ゲノム全体にわたるDNAメチル化の変化をまとめた。それぞれの研究で、メチル化(エピジェネティックな変化のうちDNA発現を示すもの)の程度が健常の対照者に比べて増加または減少している遺伝子領域が11か所および7か所見つかった。これらの遺伝子領域は、アミロイド斑の増大、ADに顕著なタンパク質の形成、臨床で特徴的な神経変性といったAD症状に密接に関連している。そのうち、ANK1、RHBDF2、 RPL13、CDH23の4遺伝子は2つの研究双方に見られ、結果の交差再現となっている。
これら遺伝子の細胞における正確な機能はいまだ不明だが、今回の結果は、ADの神経生物学的基礎の研究と可能な治療法にとって新しい対象を提供している。DNAメチル化は遺伝子発現に外的影響をもたらす機構であり、こうしたDNA修飾がADのような加齢に関連する神経変性疾患の一部に関わっている可能性があり、また、この病気が散発的に発生し得る仕組みを示唆しているのかもしれない。
doi:10.1038/nn.3782
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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