【素粒子物理学】反物質の電荷を測定する
Nature Communications
2014年6月4日
反水素原子の電荷に関して、これまでで最も正確な制限を示すCERNの共同研究グループALPHAの論文が、今週掲載される。この知見により、物質と反物質の電位差の限界が初めて示された。
物質と反物質の性質に関する現在の理論によれば、両者とも同じような挙動を示すと考えられており、もしどんなに小さくとも両者間に差が見られれば、現在の物理学モデルは修正を迫られる。ところが、この宇宙には、観測可能なスケールの反物質が存在していないため、こうした実験的検証が非常に難しい。反物質を作製し、十分な量の反物質を貯蔵して、そのような検証ができるようにする作業が進められているが、現在のところ、非常に少量の反物質しか作製されていない。
CERNの共同研究グループALPHAは、最近、反水素原子を捕捉して調べる実験的研究を行ったが、今回、その結果の遡及的解析を行って、予想された電荷中性(既に通常の水素の電荷中性が高い精度で得られている)からの逸脱を調べた。この解析では、実験装置の電場による反水素原子の偏向の有無を調べた。そうした偏向は、反水素原子に正味電荷があることの徴候だ。
ALPHAは、そのデータと詳細な数値モデリングを組み合わせて、反水素が、単位電荷の(-1.3 ± 1.1 ± 0.4) × 10の-8乗倍まで電荷中性であることを発見した。この測定結果は、これまでの推定よりも約100万倍精度が高く、研究者は、この測定結果によって重力下での反水素の加速の関連測定における一部の影響を排除できる。
doi:10.1038/ncomms4955
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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