どこで分裂するかを知る
Nature Neuroscience
2014年5月26日
Eml1遺伝子の突然変異は、ヒトの重度皮質形成異常に関わっているとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。この発見は、先天性脳疾患に関わる遺伝子やその機構についての知識を拡張するものである。
ヒトの皮質下帯状異所性灰白質(SBH)は皮質形成異常の一型で、知能障害とてんかんを伴う。この疾患は神経細胞の遊走に欠陥がある結果として生じると考えられている。脳の構築過程では、未成熟の皮質ニューロンが胚における位置から成人脳における最終的な目的地へと移動する。
Fiona Francisたちは皮質下異所性灰白質のモデルマウスを用い、皮質形成異常の原因を研究した。Francisたちは、これらマウスの異所性灰白質 はEml1遺伝子の突然変異に起因することを発見した。この遺伝子には、細胞の形や細胞分裂に関わる細胞構造に付随するタンパク質の情報がある。Francisたちはまた、Eml1の突然変異が出生前の期間で皮質ニューロンの生成に関わっている特別の神経前駆細胞の機能を損ねることも発見した。
この異所性灰白質モデルマウスでは、神経前駆細胞は脳室近くの通常の部位から出発し、ニューロンを生成すべき皮質へと遊走していくが、その場所が不適切である。これが、マウスで異所性灰白質として現れる結果となる。Francisたちはそこで、皮質形成不全になった患者について Eml1の突然変異の可能性を調べた。動物での結果に一致して、Francisたちは重度の異所性灰白質に罹患している2つの類縁のない家系で Eml1遺伝子に突然変異を発見した。
doi:10.1038/nn.3729
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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